地域に密着したかかりつけ医にもオンライン診療を。 ~かかりつけ医の新たな取り組み~

医療法人社団 家族の森 多摩ファミリークリニック
大橋 博樹 院長

コロナウイルスの感染拡大を受けて、かかりつけ医の中でも発熱外来や定期通院している方へのフォローアップ等、オンライン診療の活用機会が増えています。かかりつけの先生方が集まる「日本プライマリ・ケア連合学会 」の副理事長 、オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会の構成員なども務めておられる大橋先生は、地域を支えるかかりつけ医として、オンライン診療を活用した様々な取り組みをされております。

ここでは、大橋先生にオンライン診療導入のきっかけから具体的な運用方法、そして大橋先生が考えるオンライン診療の展望などについてお話しを伺いました。

オンライン診療導入のきっかけはコロナウイルスの感染拡大

当院は川崎市登戸で開業し、1日120名程度の外来患者さんと220名前後の訪問診療患者さんを担当させていただいております。外来の半数は小児の患者さんで、親子受診してくださる方や三世代受診の方も多くいらっしゃいます。

正直、コロナ禍になる前はまさか自分がオンライン診療をはじめるとはこれっぽっちも思っていませんでした(笑)。従前の制度では、オンライン診療の要件に、患者さんの限定や対面診療を直近3か月毎月算定していなければならないなどの制限がありました。そのため、私たちのような一般のかかりつけ医にはハードルが高く、オンライン診療に踏み切れないでいました。しかし、コロナウイルス感染拡大による2020年4月10日の時限的緩和で、初診や初めましての患者さんにもオンライン診療が実施できるようになり、これをきっかけに、当院でもオンライン診療を活用できるのではと考えました。

ひとくちにオンライン診療といっても、様々な活用方法があると考えましたが、どういった患者さんと実施するので適切か、懸念がないかも悩みました。具体的には、
「発熱患者さんのトリアージ」
・自宅での療養が可能か、すぐにPCR検査を行うべきか、入院を考慮すべきかをトリアージする

「慢性疾患で通院中のかかりつけ患者さんの非来院対応」
・通院による感染リスクを考え、遠隔にて対応する

「かかりつけ患者さんの久しぶりの受診や新規症状への対応」
・普段血圧で通院している患者さんが、鼻水が出たというケース等
・どこまでオンライン診療で対応するべきか検討が必要

「全くの初診患者さんのあらゆる相談」
・制度上は時限的緩和により認められた
・そもそも、電話やオンライン診療で対応してよいのか検討が必要

等です。
それぞれの活用方法について、何が適切なのかをひとつひとつ考えて、まずは発熱患者さんのトリアージにおいて、本格的にオンライン診療を導入することにしました

スタッフと試行錯誤を重ねて作った、安全で効率的な運用フロー

当院は、2020年4月より発熱者外来を開設、2020年5月より自院にてPCR検査を開始しました。1日に10名程が来院する中で、今後の感染者増加に対応できるようオンライン診療を活用しようと考えました。

院内導線の構築するにあたっては、スタッフと密に打ち合わせを行いました。複数の運用案を出し、その中で一番患者さんに負担がなく、安定して診療を行う事ができる運用を選択していきました。PCR検査の適応は主に問診で判断をしていましたので、発熱外来に来る方は事前オンライン診療をすることにしました。明らかにコロナウイルスに感染していない人にはオンライン診療だけで処方をして完結。コロナウイルス感染の可能性がある人は来院してもらう運用にしました。会計も非接触で実施することで、スタッフの安全を担保しつつ、1日に40名近い発熱患者さんの対応ができる運用を作りました。診療日の中で発熱者オンライン診療枠というものを設け、区別することで逼迫した状況を簡略化・効率化して運用できたと考えています。

オンライン診療でも、かかりつけ医と患者さんの関係性を大切に

オンライン診療開始した当初は、専用のシステムを使わず自分たちで体制を構築していましたが、件数が増加するに伴い、セキュリティ面の不安が出てきたため、現在ではYaDoc Quickを活用しています。

オンライン診療システムは、セキュリティはもちろんのこと、予約方法や決済方法など、メーカーによって様々な特徴があります。YaDoc Quickは、使用料といった患者さんの自己負担がない点や、患者さんはアプリを使わず、外来の予約システムと同じような導線で患者さんがオンライン診療を予約できる点が良かったです。

対面診療でもオンライン診療であっても、かかりつけ医と患者さんとの信頼関係が何より重要です。今後のオンライン診療利用においても、かかりつけ医がしっかりと患者さんと関わっていくことが重要だと考えています。たとえば、アプリから医療機関を検索して予約するとなると、かかりつけ医ではなく、そのアプリ上で空いている医療機関に予約するようになってしまうのではと個人的に思っています。オンライン診療も、ちゃんとかかりつけ医で受診することを促すシステムが必要だと考えていました。かかりつけ医と患者さんの関係性を崩さず、簡便であるという点で最も優れていると感じ、YaDoc Quickを選びました。

オンライン診療を始めて分かった多くの気づき

まず思ったことは、画面越しの情報は想像以上に有用であるという事です。はじめる前は、ビデオでの診療なんて危なくて出来ないと思っていましたが、様々なメリットがありました。会話は途切れることなくスムーズにできますし、患者さんの表情等も非常にきめ細やかに確認することができます。血圧手帳等、患者さんが日々記録している情報も画面越しの閲覧で十分でした。お子さんで、調子が良いかどうかといった様子は画面越しである程度見ることができます。昨今のカメラ性能の向上もあり、私自身やってみて、ビデオでもここまでわかるんだと驚きました。

また、オンライン診療だからこその利点もあります。喘息で悩まれている猫アレルギーの患者さんと実施した際、室内を猫が歩き回っている様子が映りました。これにより、飼い方の指導が必要だなとわかったのです。これは生活の様子を見れないとわからない事でした。他にも、会社の空き時間でオンライン診療を実施した患者さんの後ろに営業成績が表示されており、ストレスが多い環境なのだなと分かった事もあります。これまで、患者さんの生活の様子を知ることができるのは訪問診療に限られていましたが、オンライン診療ならではの大きな利点と感じました。

患者さんとしてのメリットも大きいと感じました。当院は子育て世代や働き盛りの方も多く、受診できるのが土曜日に限られる患者さんも多くいます。せっかくの休日が受診でつぶれてしまう事を心苦しく思う事もありました。対面受診を三ヵ月に一回にして、その間はオンライン診療で一か月毎にフォローすることのしても、診療の質を落とすことなくできるのかなと感じています。患者さんも平日の昼休みなどに受診できるので、土曜日の混雑も緩和され、他の患者さんにも良い影響があると感じました。

オンライン診療は『第4の診療形態』としてプライマリケアの必須のツールに

オンライン診療の時限的な緩和については、完全解禁と捉えられている側面もありますが、私は少し違う考えを持っています。
今はオンライン診療が如何に適切な形で普及するかをいろいろと見極めている段階だと思います。だからこそ、誤ったオンライン診療が普及してしまえば、今後拡大すべき適応についても見送られてしまうのではないかという懸念を持っています。そうした懸念もあり、私が所属する日本プライマリ・ケア連合学会 では、オンライン診療に適する症状や適さない症状についてまとめたオンライン診療ガイドを出しました。今後、適切な普及がなされる事を切に願います。適切に普及していければ、オンライン診療は、外来・入院・在宅に加えて第4の診療形態としてプライマリケアにおいて必須のツールになると考えています。

どうした適応が普及していくのかについては、「ある程度の急性症状の初期対応」、「生活習慣病などの定期フォロー」、「禁煙外来(2回目)」、「睡眠時無呼吸症候群におけるCPAP療法(データ管理の元で)」等があると思います。患者さんがどうしても対面で診察してほしい場合は、そもそもオンライン診療を受けたいとは言わないと思います。薬局のOTCでは不安だな、でもクリニックに行くほどじゃないかなといった状況でオンライン診療を活用する方が多いような印象があります。

また、軽度外傷後のフォローでオンライン診療を活用するシーンがありました。包丁で切ってしまった手を縫合したあと、翌日オンライン診療で創を診察しました。オンラインでも十分観察できたので、翌週の抜糸時に来院してもらう事とし、消毒指示を出して診察を終了しました。患者さんの通院負担を減らすことができた事例だと感じています。その他、在宅診療の緊急対応などにオンライン診療を活用することで、患者さんに安心していただく事ができますし、移動の距離がかからない事から効率化という観点でメリットが大きいと考えています。

このように、オンライン診療は様々なシーンで活用できると思います。電子カルテをいれる際、悩んだ医師もいたと思いますが、導入した人は「入れてよかった」「便利だ」と感じることが多いと思います。5年後10年後、オンライン診療もそうなるのではないかと考えています。患者さんのニーズにあわせられる体制を作るのは重要だと思っています。

一方、効率性だけを重視して安全性を担保しないで推進していくことには厳しい姿勢で臨まないといけないと思います。根底にはかかりつけ医と患者さんの信頼性があるという事を忘れずに、オンライン診療が発展していくことを強く望んでいます。

地域に密着したかかりつけ医の大橋先生に、はじめてオンライン診療に取り組んだ際のお考えや、実施してみての感想等についてお話を伺いました。
今後も先生のお取り組みを発信できればと思います。

  • YaDocの導入、および臨床における利用は、各医療機関の医師の判断によるものです。