モニタリングと問診の活用

呼吸ケアクリニック東京
所長 茂木 孝先生

呼吸ケアクリニック東京は、呼吸器専門医療機関として高度な診療に力を入れていらっしゃいます。今回は、所長の茂木先生にYaDocの活用方法についてお話をお伺いしました。

オンライン診療システムを導入されたきっかけをお聞かせください。

当院はCOPDや喘息などの慢性呼吸器疾患の専門的な診療をしており、遠方から通院されている方が多くいらっしゃいます。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発出された際、通院できないからどうしようと患者さんから相談されてオンライン診療の導入を検討しました。

呼吸器領域では聴診や検査が必要となりますし、私のポリシーとしても全ての患者さんをオンライン診療へ置き換える事は考えていませんでした。そこで、定期的に遠方から来院していただいていた患者さんに対し、その通院負荷を軽減するため、オンライン診療を導入することにしました。

YaDocを導入された理由をお聞かせください。

開業前から、ITを活用した問診や遠隔モニタリングを通じてCOPD増悪の早期発見に関する研究を進めることを検討していた中で、インテグリティ・ヘルスケア社のYaDocを知りました。

YaDocにはオンライン診療を実施する機能だけではなく、YaDocアプリ内で定量的に評価できる問診スコアを入力し、患者さんが入力した問診データを医師が時系列で閲覧できる問診機能や、患者さんがスマートフォンのアプリから診察時以外に在宅時の呼吸数やSpO2等のデータを入力し、医師がPCからそのデータをグラフ化して閲覧できるモニタリング機能があります。

来院時にiPadで取得した問診結果を経時的に表示したり、診察時以外にスマートフォンから入力のあった患者さんの症状データをタイムリーに閲覧したりしながら患者さんへ治療介入ができるというのは非常に魅力的でした。

今後も臨床において、呼吸器領域でのITを通じた問診やモニタリングの項目を増やしてきたいため、フィリップス社の開発した「eHomrCare」と呼ばれる「疾患管理プログラム」と呼吸装置治療支援プログラム「ケア オーケストレーター」との連携機能が、YaDocに追加されたシステムに変更しました。

最近のYaDocの運用状況についてお聞かせください。

開業当初から、COPD患者・喘息患者へYaDocを通じたモニタリングや問診を実施しており、現在累計で250名程の患者さんへ実施しています。外来受診時にiPadで問診を入力してもらっており、一部の方にご自身のスマートフォンで日々問診やモニタリングのデータを入力してもらっています。

また、現在は電話診療を行うことも多いですが、遠方の数名の患者さんへアプリを通じオンライン診療を実施しています。

ITリテラシーの高い患者さんについてはご自宅で空いた時間等にスマートフォンからも問診の入力が可能ですが、当院の患者さんは高齢者が多くを占めており、スマートフォンを扱うことが難しい患者さんもいるため、初回は待合室でスタッフのサポートのもとiPadから問診入力をしてもらっています。そうすると、2回目以降は慣れてスムーズに入力してもらえることが多いです。

問診の評価スケールとしては、疾患の状態を定量的に評価できる「CAT (COPD assessment test)」「mMRC (modified medical research council)」と「ACT(Asthma Control Test)」を用いており、患者さんに事前に入力してもらって、時系列でスコアを管理しています。

長い方だと、3年間ぐらいこの問診を入力してもらっています。その経時的な問診のデータを見て、患者さんの状態を把握し、診察の際に先生から患者さんへ問診データをフィードバックし、必要な治療介入を検討しています。

YaDocまたはeHomeCareをご活用されてみてのご感想(患者さんからの感想も含めて)をお聞かせください。

導入によって問診の時間が短縮できており、うれしく思っています。

これまでに直接患者さんに感想を聞いた事はありませんが、待合室でのiPad問診をお願いしたときに、回答したくないと言われたことはほとんどありません。

オンライン診療については、呼吸器の診察の多くは検査や聴診が必要になることから、難しいこともありますが、遠方にお住まいの患者さんは通院負荷が大きいため、オンラインで受診できることにメリットを感じていらっしゃいます。

また、患者さんがアプリへ入力した問診スコアの経時的な改善があった場合に、私からPCの画面を通じて患者さんへ良くなっていることをフィードバックしています。すると、患者さんから問診やモニタリングでは伝えきれていないことに気が付いて、ご自身の状態を私に伝えてくださったり、治療に意欲的になられたりすることもありました。

今後はどのようなご活用を検討されていらっしゃるかをお聞かせください。

問診やモニタリングの機能については、自動的に患者さんの症状のデータが蓄積されたり、患者さんの入力の手間が少なくなったり等の進化をとげれば、さらに活用の幅が広がるのではないかと思っています。

オンライン診療におけるビデオ通話機能については、現在電話等再診が認められている状況なので、電話の方がどうしても多くなっていますが、今後、制度上もオンライン診療のニーズが広がっていけば、もっと積極的に取り入れたいと考えています。収益性確保や診療の質の維持という観点で考えると、全ての患者さんにオンライン診療を実施することは難しい部分もありますが、eHomeCareのモニタリングや問診機能を活用することで、オンライン診療の質を補完できることもあります。

対面診療とオンライン診療実施どちらを行うにしても、モニタリングと問診を今後も積極的に実施していきたいと考えています。

YaDocを用いて多様な取り組みをされている茂木先生からお話を伺いました。 今後も、茂木先生のご活動を発信できればと思います。 茂木先生、この度はご協力いただき誠にありがとうございました。

YaDocの導入、および臨床における利用は、各医療機関の医師の判断によるものです。

  • YaDocの導入、および臨床における利用は、各医療機関の医師の判断によるものです。